工芸では形式と同様に素材への執着が最も基本的な要素になっている。
ガラス工芸の素材すなわちガラスという素材は、中でも独特である。
一般の不透明な素材は表面が見えるだけであるのに対し、ガラスは透明なものであるから、物質の内部まで見えるような気がする。
しかし、実際のところ、透明なガラスであっても見えるのは表面だけなのだ。 表の表面と裏の表面とを見ているだけなのである。 内部にインクルージョンや気泡がある場合、インクルージョンの表面を見ているか、気泡の表面を見ているだけなのだ。
ものを見るということはものの表面が立体的に形作る表面を見ることであり、そこで反射なり透過する光の色彩と明るさとを感じることなのである。ものそのものを決して見ることがないというのは、最近話題になることもある暗黒物質、すなわちダークマターの場合と変わるところがない。
とはいえ、ガラスという材料は、以上のようなことを気づかせてくれるのである。
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